2014-01-01から1年間の記事一覧

第103回 SLで行く雪の湖北 

〜北陸本線・米原から琵琶湖周遊の旅〜 夏が過ぎ、冬になると、暑い夏が懐かしくなるのと同じで、SLの旅が恋しくなる。SLの夏はトンネルで窓も開けられず、むせた。ところがいまは、あの煙と音、ポーという汽笛が旅こころをくすぐる。汽笛は旅の始まりだ…

第103回 SLで行く雪の湖北 〜北陸本線・米原から琵琶湖周遊の旅〜

夏が過ぎ、冬になると、暑い夏が懐かしくなるのと同じで、SLの旅が恋しくなる。SLの夏はトンネルで窓も開けられず、むせた。ところがいまは、あの煙と音、ポーという汽笛が旅こころをくすぐる。汽笛は旅の始まりだ。 岐阜と福井県境の湖北は北陸と畿内・…

第102回   新東京・江東をゆく

〜ノスタルジー共有なるか高層マンションと運河〜 東京は日に日に進化している。大阪との違いはここだ。京都はともかく、全国都市で50年前と現在を比べて著しい変わりようは東京と福岡だろう。なかでも、湾岸線に目を見張らざるをえない。隅田川、荒川沿岸…

第101回 大和一の紅葉の名所・多武峰、吉野

〜「大化の改新」の舞台をゆく〜 月末の急激な冷え込みで紅葉が鮮やかになった。出かけるなら京都を避けて、近江は湖東三山、奈良は多武峰(とうのみね)がお勧めである。多武峰は明日香村の北東に位置し、近鉄桜井駅からバス25分で終点、談山神社停留所へ…

第100回 「青春紀行」 〜ふたつの詩の輝き〜

青春とは人生のある期間ではなく心の持ちかたをいう (サムエル・ウルマン) 草原の輝き、花の栄光 再びそれはかえらずともなげくなかれ (ワーズ・ワース) * 1945年(昭和20)8月30日、アメリカ空軍機が厚木飛行場に着陸した。コ−ンパイプを手に…

第99回 窓に額をつけて見つめた「青春夜行」

− − 〜隠れ東海道線・大垣―美濃赤坂をゆく〜 次回100回記念の旅は、「青春紀行」。過日、新聞のコラムで高校生の部活の連載企画の題が「青春」であることに、筆者は若者には古臭いという感想を寄せていた。最 初、良く意味が飲み込めなかったが、別のコラ…

第98回 史上最大の家康の「いちゃもん」から400年

〜大阪冬・夏の陣を生んだ方向寺の梵鐘銘文〜 京都東山の京都国立博物館の大和大路沿いの巨石組みは、いわば歴史遺産といえる。三十三間堂は七条通隔てた南にある。この石組みを北に歩くと、方向寺であ る。都では大仏さんと呼ばれていた。いまはその面影は…

第97回 京の隠れ里、花脊で火の饗宴「松上げ」

〜夜空に描くタイマツの環〜 大文字送り火の前日、北山の里で繰り広げられる火祭りは、観光客に見逃されている。大文字の陰で話題になることも少ないが、一見の価値はある。山里の夜空に描かれる火の環は、大文字にない郷愁を誘う日本の夏だ。 里を離れた若…

第96回  幕末揺るがす祇園祭の惨劇  

〜近江商人の見た池田屋事件〜 近江商人小杉屋の番頭、元蔵は商いのため、京へ出てきていた。小杉屋は主人と元蔵のふたりが切り回す新興の店である。まだ近江五個庄に店を構え、出店は なく、京の商いは商人宿「近与」を拠点に商いをしていた。「近与」は三…

第95回 八咫烏(やたがらす)の聖地 〜紀州熊野古道をゆく〜

ブラジルのサッカーWカップが開幕した。空で3本足のカラスが舞っている。日本代表の胸のマークは守護神・八咫烏だ。長さの単位で八咫は大きい意味にな る。この旅もニッポンの活躍を祈願して、サッカーゆかりの神社参拝から始めた。八咫烏(やたからす)の…

第94回 聚楽第跡で生まれた大物 

* * 粟津征二郎氏の最新作が「学研」より発売されます。 「慈悲の人」 蛍山禅師を歩く 道元の禅風を受け嗣ぎつつ、曹洞宗の民衆化路線を指揮した蛍山禅師とはどのような人だったのか? (粟津氏談) 蛍山は道元の下で隠れた存在ですが、優れた思想家であり…

第93回 新緑の京の山歩き町歩き 〜大文字山紀行〜

粟津征二郎氏の最新作が「学研」より発売されます。 「慈悲の人」 蛍山禅師を歩く 道元の禅風を受け嗣ぎつつ、曹洞宗の民衆化路線を指揮した蛍山禅師とはどのような人だったのか? (粟津氏談) 蛍山は道元の下で隠れた存在ですが、優れた思想家であり又マネ…

第92回 日本一長いローカルな飯田線でゆく伊那の高遠桜まつり

年金と健康保険の2本差しの旅の特徴は、時間がたっぷりあることだ。何時までにつかねばならない。誰かが待っているなど、恋のときめきからは縁遠い旅。猫 とたわむれる日々でふと、青春キップを使った各駅停車が思い浮かんだ。花見ができて、道中がゆっくり…

第91回 雛に託す女の願い、厄払い

〜全国各地で観光行事になった「流し雛」〜 3月の風がいすわる寒波を追い払いつつある。寒さも峠を越したようだ。すでに雛祭り開幕の地域もある。雛飾りの種類も檀雛から吊るし雛、さげもんなど地域によって異なるが、観光客に人気があるのが流し雛。人形を…

第90回 W・M・ヴォーリズを歩く

〜海を越え、青春が結んだ西洋建築と心〜 今年は明治、大正、昭和の日本に西洋建築の粋を築いたウイリアム・ヴォーリズの没後50年である。青い目の近江商人の別名があるがごとくヴォーリズは滋賀 県近江八幡市を拠点に数多くの建築を残した。またメンソレ…

第89回 ふるさととは 北陸の地に犀星と高見順の生地を訪ねて

旧年になるが、能 登の帰りに金沢を歩いた。晩秋を飛び越し、すでに冬であった。北陸の気候ではさして珍しくもない。兼六園の雪吊りの唐崎松が枝を震わして雪を待っている。 湿った雪は金沢といわず北陸の特徴である。雪吊りは重い雪から木を守る金沢の智恵…