第2回  京のまち歩き 〜その2 冬の旅〜 2007/09/19  閲覧(526) 閲覧(526+333)

   京の冬は確かに冷える。冷塊があやしげに空から押し寄せてくる。コートなしで外へ出ると、しばらくは寒さを感じないが、やがて肩から冷たくなり、気がついたときは、もう遅い。冬はコタツで動かないのが、京都人のようで、だから、京都人の屁は臭いことで定評がある。しかし、京都を歩くには、春よりも秋、秋よりも冬がいい。体は縮まっても、心はなごむ。内からこみ上げる旅の解放感を外の冷気が包む不調和が冬の京の魅力の魅力だろう。

   秋にぎわう定期観光バスにしても、冬の旅コースは、名作を上映する映画館のごとく、京都好きが集まる。普段、非公開の社寺を拝観できるのも冬の特徴だ。客の大半は女性で男はすみで小さくなる。新幹線で日帰りの夫婦も珍しくない。どこかで見た顔と、思う著名人と乗り合わせるのも冬の旅の楽しみである。

   定期観光バスの冬の旅は66年、明治維新史めぐりからスタートした。春、秋に集中する観光客を年間通じたなだらかな波にするのを狙いに、冬、夏の旅が生まれた。ヒット作は平家物語と京女の歴史。女性客がこのシリ−ズを支えてきたといってもいい。「昔からいう京女との出会い、旅していて気になる」と、乗客は語る。かつて茶室めぐりのさびコースが人気があり、各地のお茶のお師匠さんが弟子を引率、バス車内から茶席まで火花を散らし、気楽に参加できない雰囲気が生まれ、中止になった話が伝わる。

   学生ガイドに聞いた話では、以前は行く先々の茶室でお師匠さんがそれぞれ説明を競いあったというから、さしずめ京の冬は茶道の甲子園、ここへ京女が加われば、新撰組よりも京都の活性化につながること間違いない。今年のわびコースが茶室めぐりで、東福寺.・光明院で表千家社中の茶席が用意され、想像するだけでも緊張する。そこを、さらりと、やるのが京都どすえ。京女のつぶやきが聞こえてくるようだ。


   メモ 定期観光バスの旅はみやび、わび、あじわい、うるわしのコースがあり、5時間から6時間コースで料金は9000円―9500円(昼食込み)